薬剤抵抗性遺伝子頻度シミュレーション

 シミュレーションは集団遺伝学を利用した.本当はこの先,個体群成長の密度依存的な数式での処理をしなければいけないが,今回はごくごく簡単に.
 Rは薬剤抵抗性遺伝子,Sは感受性遺伝子とする.ネギアザミウマの場合,TDさんのデータから考えると1遺伝子座2対立遺伝子と考えても妥当である.遺伝子型はRRとRSは薬剤抵抗性.SSは感受性.
最初に薬剤で淘汰圧がかかる.そのためRRの頻度が上昇する.ここでは個体群の95%がRの遺伝子を持つとする.しかし,RRはSほど適応度が高くない(産卵数や生存率が悪い).というのも,薬剤抵抗性遺伝子が発現するからその分SSやRSより適応度が減少する.RSは薬剤抵抗性をもつが,ヘテロな状態なので適応度はあまり減少しない,とする.集団遺伝学の手法を利用したら以下のグラフのようになる(横軸は世代数,縦軸はRの頻度).系列1は薬剤抵抗性でも適応度が感受性個体と同じ場合.それ以降,適応度は0.8, 0.6, 0.5, 0.4, 0.2および0となる.

 このグラフから考えられるのは薬剤抵抗性の適応度が感受性の適応度と同じならば薬剤がかけられなくともRの頻度は同じである.しかし,適応度の差が大きければ大きいほどRの頻度はあっという間に下がる.つまり,薬剤抵抗性と感受性の個体の適応度を調べることは非常に重要である.この適応度の差により防除指針が変わってくる.まあ,当然と言えば当然.でも,この分野直感的な思考が多いので数的に処理することも大事である.